執筆バージョン: Unreal Engine 5.5.2
|
今回も前回に引き続きUnreal Engineのモーショングラフィックス(以下、MG)プラグイン「Motion Design」をご紹介します。
今回はMotion Designの中でも注目の機能、メッシュを複製する「Cloner」と複製したメッシュに様々な効果を適用する「Effector」を解説していきます。
ClonerとEffector
「Cloner」および「Effector」はMotion Designにおける重要機能の1つです。この2つはNiagaraを元にした機能で、Niagaraで行えるような多彩な視覚エフェクトをMG用にもっと扱いやすくしたものになります。
ClonerとEffectorを使えるようになると下のようなMGのエフェクトを簡単に作成できるようになります。
Clonerでメッシュを並べてみよう(マスク、 Range、Twist)
ClonerはMotion Designで大量のスタティックメッシュパーティクルを扱うためのActorです。メッシュをグリッド状や円形、スプラインに沿ってなど様々な法則に従って並べることができます。
まずはClonerを配置してみましょう。左のパネルからActors→Cloner ActorでClonerを画面上に配置することができます。


初期状態だとキューブが3×3×3のグリッド状に並べられていますが、このままだとEffectorの効果を見る上で1つ1つのメッシュが大きすぎる上に、メッシュの数ももっとあった方が分かりやすいです。まずはLayoutのCount Xを1、Count Y、Zを50にします。これでグリッド状に1×50×50でメッシュが並べられます。

次にメッシュを小さくします。Clonerはアタッチされている子のメッシュを複製するので、DefaultCloneのメッシュのスケールを変更すればそれぞれのメッシュの大きさを変更できます。今回は全て0.1倍にしていきましょう。

今度は離れすぎているので、メッシュ同士の間隔を変更します。LayoutのSpacing X、Spacing Y、Spacing Zを1/10に変更して間隔を狭くしましょう。

これでキューブメッシュを並べることができました。
なお、もしメッシュの見た目を変更したい場合はデフォルトのメッシュを削除して他のメッシュをアタッチすれば変更できます。
Clonerは基本的には後述のEffectorと組み合わせてメッシュのスポーナーのように扱うものですが、単体でもアニメーションを作り出せそうなパラメーターがあります。いくつかご紹介いたしましょう。
・Constraint
並べたメッシュを球状やシリンダー状、あるいはテクスチャに合わせて制限することができます。
・Range
並べたメッシュの位置、回転、スケールにある程度のランダム性を付与できます。
・Twist
並べたメッシュに「ひねり」の動きを加えます。パラメーターでひねりの程度や方向を指定できるので、シーケンサー上でパラメーターを操作するだけである程度見栄えのするエフェクトを作成できます。
ClonerにEffectorを設定してみよう
EffectorはClonerを動作させるためのActorであり、Clonerで並べたメッシュに複雑なエフェクトを簡単に適用することができます。
とりあえず、Clonerで並べたメッシュの上にEffectorを配置してみましょう。左のパネルのActors→Effector Actorから配置します。

Viewportの見た目的に何も変化が起きないので不安になるかもしれませんが、右のMotion Design Outlinerを見るとちゃんとEffectorが追加されています。Effectorを適用するためにはまず配置したEffectorをClonerに登録しなければいけません。ClonerのDetailsパネルから配置したEffectorを登録しましょう。

Effectorを配置した部分を中心にClonerのメッシュが赤くなったと思いますが、これはデフォルトでカラーを変更するエフェクトが適用されているためです。

分かりやすくエフェクトを追加してみましょう。EffectorのMode→OffsetのXの数値をプラス側に変更すると、Clonerメッシュが球状に凹みます。

マイナス側に変更すると今度は逆に膨らみます。色がついた球状の重みづけに従って、メッシュの位置にオフセットが適用されるのが分かると思います。

・Shapeパラメーター
Effectorの形状は球状だけではありません。Shapeのパラメーターでコントロールできます。他にらせん形状やドーナツ状、全体に適用など大まかな設定があり、カーブなどを使ってさらに細かい重み付けの設定もできるようになっています。
ここではためしに球状から箱状に変更してみましょう。

このように四角形に適用されるようになりました。
Shape注意点として3次元的に適用されるので、らせん形状などはこのままだと変化がよく分からなかったりします。この場合Effectorを横倒し(Pitch = 90°)などにすると分かりやすくなります。

・Modeパラメーター
Clonerメッシュをどのように変化させるかもModeのパラメーターでコントロール可能です。
ノイズを使って変化させるNoiseエフェクトを適用してみましょう。Modeごとに固有のパラメーターがあり、Location Strengthを変化させるとこのようになります。

Noiseは固有パラメーターが豊富で、PanやFrequencyを変化させることでかなり面白い動きをします。他のModeも含めていろいろと試してみましょう。
Effectorを動かしてみよう
Clonerに設定したEffectorをエディタ上で動かしてみると、Effectorの面白さがよく分かります。
Clonerに適用されたエフェクトがEffectorに合わせて動いているのが分かります。Niagaraでもこうしたエフェクトを作成することはできますが、ClonerとEffectorの方がはるかに簡単に作れるのが利点です。
EffectorそのものをシーケンサーやAnimatorで動かしたり、効果範囲などのパラメーターの変更もシーケンサー内で可能です。
ClonerのEffectorsパラメーターが配列になっていることから分かる通り、1つClonerに複数のEffectorを登録できます。また、その逆に1つのEffectorを複数のClonerに登録することも可能です。
物理的な動きを使ってみる
Effectorでは物理的な力を使ったエフェクトを作成することもできます。使用する場合、EffectorのForces→Force Enabledをオンにします。

これでVortex ForceやCurl Noise Forceなど、Niagaraで利用できる力学的なエフェクトを選ぶことができます。エフェクトのパラメーターはNiagaraほど自在に設定することはできませんが、それでも重要度の高い項目は設定できるので、手軽に適用したい場合はこちらが便利でしょう。
Vortex Force
Curl Noise Force
また、これらの物理エフェクトと合わせNiagaraと同じくClonerにはコリジョンを設定することもできます。コリジョンの設定は2種類あり、Clonerで生成されたメッシュ同士のコリジョンと別のメッシュとのコリジョン判定に分かれます。
ClonerのCollisionsカテゴリにはParticle Collision Enabled(パーティクルメッシュ同士のコリジョン)とSurface Collision Enabled(別メッシュとのコリジョン)が設定できます。
Particle Collision
Surface Collision(+ Gravity Force + Vector Noise Force)
少し設定するだけで、このようなエフェクトを手軽に作成することができます。
UE5.6以降におけるMotion Designの動向
さて、この記事を書いている間にUnreal Engine 5.6が発表されました!そしてめでたくMotion Designは実験的機能からベータ版となりました!
ぱっと見は少しUIが変わったかなというぐらいでしたが、ClonerとEffectorに対して新機能追加や、PSDレイヤーのインポートなども行えるようになったなど、様々な点で改良されているようです。
Motion Designはブロードキャストでの利用など様々な利用法に適応できるように考えられている機能なので、今回は省略しますが、実はまだまだ紹介しきれていない機能がたくさんあります。
今後、さらなる追加の機能も実装されていくはずなので、ぜひそれらも活用し素晴らしいMG表現を目指してみてください。それでは!