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2021.10.28イベント

【座談会】2ヶ月間でイベントシーン制作を学んだ『プランナーブートキャンプ』を終えてー参加者3名のリアルな感想を聞く

ゲーム業界を目指す学生や他業種の人材のキャリアアップを目的とした『プランナーブートキャンプ』。イベント監修を担う株式会社ヒストリアの開発現場で実際に使用されているスクリプトエンジンを用いてイベントシーン制作に取り組んだ参加者は、講座を通じてなにを学び、どう成長したのでしょうか。株式会社ヒストリア 代表取締役 佐々木氏と、今回の講座を全面的にバックアップした同社エンジニア 森氏を聞き手役として、参加者3名を招いたオンライン座談会を行いました。

 

プランナーブートキャンプとは?
プランナーブートキャンプは、株式会社ヒストリアと株式会社クリーク・アンド・リバー社によって共同開催された「ゲームのイベントスクリプトを作成する」ことを目的としたイベントです。受講者は2021年6月から2カ月間に渡り、オンライン講座と実践課題に取り組み、講座前半では大量のモンスターに襲われた仲間を救出する「ファンタジー編」、後半では山奥の洋館での悲劇を描いた「殺人事件編」のスクリプト制作に取り組みました。また、それぞれの作品は、株式会社ヒストリアをはじめとする数多くの協力企業の取締役や役員クラスの方をお招きした中間・最終発表会でお披露目され、参加者はその場で実践的なフィードバックを数多く受け取りました。

株式会社クリーク・アンド・リバー社によるイベントレポートはこちら 

 

 

主催側のサポートと参加者同士の支え合いによる好循環

本日はよろしくお願いします。まずは、みなさんのご経歴と現在のご職業、Unreal Engine(以下、UE)歴などの自己紹介と、今回のプランナーブートキャンプに参加しようと思ったきっかけをお願いします。

 

進捗ダメ太郎と申します。静岡の大学を卒業後に就職して、現在はサラリーマンとして働いてます。UEはイベント以前から1年ほど勉強しており、ゲーム業界への転職も考えていましたが、そんな中で今回のイベントをTwitterで見かけたので参加しました。よろしくお願いします。

 

いーちゃんと申します。現在は大学4年生で、UE歴は5ヶ月程度です。もともとはエンジニア志望でしたが、ヒストリアのTwitterでイベント開催を知り、プランナーにも興味が湧いたために応募させていただきました。

 

にいまるです。工学部の3年生で、UEは1年ほど前に恩師から勧められて触り始めました。Twitterで見かけたイベントの名前が「プランナーブートキャンプ」だったので、プランナー志望ということもあり、業界への足掛かりとして鍛えられるかなと思って参加しました。

 

今回は最初にファンタジー編、次に殺人事件編という形で制作を進めていただきましたが、まずは実際にスクリプト制作を行った感想を教えていただければと思います。

 

ファンタジー編では、モンスターをどう制御するか悩んだのがかなり印象に残ってますね。

 

 

たしかに、僕もモンスターを動かすのが大変だった覚えがあります。

 

 

演出をどうするかよりも、そちらが印象に残っているんですね。今回のイベントでは弊社でも実際に使用しているスクリプトエンジン『Aero Script』をお使いいただきましたが、作業環境や導入面では問題ありませんでしたか?

 

こちらでアセットを導入したプロジェクトをDiscordに送っただけで環境整備をしていただけたので、導入に苦労はしませんでした。

 

 

最初の勉強会で実演してくださったおかげで、どこから手を付けたらいいかわかりやすくて、使い始めにつまづいた記憶はないですね。

 

それはよかったです。にいまるさんも問題なく動かせましたか?

 

 

はい。新しいツールなのに数日で慣れたので、分かりやすくていいツールだと思いました。

 

 

ありがとうございます。頑張って用意したかいがありました。

 

 

ご用意いただいたドキュメントを何度も確認させていただきました。最初に全体像を掴みつつ、わからないところがあったら、動画で復習をするというかたちで学習を進めて行きました。

株式会社ヒストリアが独自開発したスクリプトエンジン「Aero Script」。RPGのイベントシーン制作およびUE4とのインテグレートに特化した設計となっており、『Caligula2/カリギュラ2』など実際のプロジェクトでも活用されている。

ツールはスムーズに使えたということで、演出の組み立てはどのように進めましたか?

 

 

私の場合は、最初にいろいろな構図を作ってみて、使えると思った部分はそのままに、よくないなと思ったカメラをどんどん変えていくという方法で作っていきました。

 

僕はプロットのテキストを一通り見て、「どこで盛り上げてどこで抑えるか」という全体の流れを最初に考えました。それから作ってみて少しずつ修正していく、わりと行き当たりばったりのような感覚でやっていました。

 

深夜のDiscord通話に参加してお話した覚えがあるんですが、毎回プレイしながら確認していると時間がかかってしまうので、絵コンテを元に組み立てて、カメラの視野角や人物の立ち位置をカットごとに調整していました。

 

Discordの話題が出ましたが、公式サーバーでの参加者同士のコミュニケーションはどうでしたか?

 

 

私はボイスチャットにとても助けられました。不具合で困ってしまった際も、Discordでアドバイスをいただいて解決できたので、あの時はみなさんの優しさに泣きそうでしたね。

 

良い使い方をしていただいていますね。他の方だと、進捗ダメ太郎さんはよく参加されていた印象がありました。

 

 

ああいう場が好きなので。僕自身、SNSでいろいろな人に助けられてUEを好きになったので、その時にもらった恩をここで返せればと。参加者として選ばれた機会にベストを尽くしてみようと思いました。

 

僕が詰まったときも、大体のトラブルは進捗ダメ太郎さんがすでに解決しているものだったのですごく助かりました。

 

株式会社ヒストリアおよびクリーク・アンド・リバー社が用意したDiscordサーバー。運営側からの連絡のほか、参加者同士が技術的な交流を図ったり、定期的な作業通話なども行われていた。

 

講座内容は同じでも、作品へのアプローチは多様
ファンタジー編を制作していただいた後、中間発表では個別にフィードバックを行いましたが、この際になにか意識が変わったりしましたか。

 

自分は経験者でしたので、他の人に力の差を見せつけよう!という気持ちで臨んだのですが、「ムービーの中心になる人物の心情がわかるカットが必要」という指摘をいただき、見やすいだけではダメなんだと思い知らされましたね。

 

[殺人事件編 進捗ダメ太郎氏 ]

 

 

中間発表の時点では、うまく出来ているのか自分でも判断ができない状態でしたが、「フレーミングが上手い」というフィードバックをいただいて、そこではじめて自分の強みが認識できました。殺人事件編の制作では、強みの部分を丁寧に作っていこうという方針が立てられました。

 

[殺人事件編 いーちゃん氏 ]

私は画面の収まりがあまりよくないと言われたので、殺人事件編では構図全般に気を遣いました。ファンタジー編では満足いかない部分がありましたが、それでも全力で取り組んだので、次は取り返そうと思って頑張りました。

 

[殺人事件編 にいまる氏 ]

その後、最終発表に向けて殺人事件編を制作されたと思いますが、それぞれ特に力を入れた部分を教えてください。

 

 

一番のこだわりは、スタンリー・キューブリックの一点透視図法と、カメラを少し傾けていく違和感というアクセントを挿し込んだことです。被害者を見つけたあと、3人が玄関で話している単調なシーンから(動画1:53から)リビングにカメラがゆっくり動いていくところの違和感が見どころです。

 

[殺人事件編 進捗ダメ太郎氏 ]

 

一番の見どころはラストの解決編での盛り上がりです。中間発表のフィードバックで場面の抑揚のつけ方がうまくできていないことがわかっていたので、緩急のつけ方を意識しました。

 

[殺人事件編 いーちゃん氏 ]

閉じ込められたシーンで、孤独感を出すために一番大きな俯瞰を使ったのが見どころだと思っています。余計な描写をいれず、あえて部屋だけで孤独感を演出しました。

 

[殺人事件編 にいまる氏 ]


制作の中で一番大変だったことや、学びになったことを教えてください。

 

 

決められた期限の中でスキルを磨き、作品の精度を追求し、第三者に見せるためにチェックを重ねていく。スクリプトでイベントシーンをつくる経験がなかったので良し悪しの判断が難しく、修正の繰り返しの泥沼にはまってしまったのはとても大変でした。

 

殺人事件編のようなミステリー作品にあまり触れてこなかったので、どういう演出がいいかを手探りで考えていくのが大変でした。学びになったことは、他のゲームなどのイベントシーンを見たときに、「演出の意図を理解できるようになったこと」です。今までよりさらに作品を楽しめるようになりましたし、制作者目線で知見を吸収しやすくなりました。

 

良かったことの一つは、イベントシーン制作を通じて映像技術が学べたことです。感覚だけでは映像を作れないことも実感しました。二つ目はプライベートなことですが、私はもともと父親とそれほど仲が良くなく、一人暮らしを始めてからはほとんど会話がない状態でした。ただ、父が映像業界出身でしたので、今回のブートキャンプで悩んだときにアドバイスをくれたり、相談に乗ってくれたりして。このイベントをきっかけにして、親子の中に会話が生まれたことがすごく良かったです。

 

そんなことがあったんですね。 人生の役に立つようなイベントができて、純粋に嬉しいです。

 

 

 

それぞれの立場から見る総括
改めて、全体を通してプランナーブートキャンプに参加した率直な感想をお聞かせください。

 

 

現場を実際に見ている方々に率直な意見をいただけたのは、本当にいい経験になりました。また、作業自体は一人で行っていましたが、Discordで相談しあったりと、みんなでやっている感覚で最後まで制作できたことがとてもよかったと思います。

 

現場で実際に使われているツールを使えたことはいい経験になりました。可能であれば、僕のように助走をつけて参加している人のために応用編のドキュメンテーションがあればさらに良かったと感じました。

 

純粋に楽しかったです!ブートキャンプを通して、改めて自分はプランナーとして映像面で武器を持てるようになりたいと思いました。今回、自分の作品を企業の方に見てもらうのがはじめてで、審査員の方は企業代表の方も多かったので「いきなりラスボスと戦わなければいけない」というような不安がありましたが、自分としても手応えのあったところを評価いただいて、自信に繋がりました。

 

ありがとうございます。ちなみに、主催者側ですが、森さんはいかがでしたか。

 

 

開催側としても、今回のイベントは本当に価値のあるものだと感じています。ブートキャンプの担当エンジニアに任命された時は正直すごく不安でしたが、参加者のみなさんが積極的に技術や情報を共有してくださってたことで、自分はサポートに徹することができました。人の力はありがたいものだと改めて感じました。「やりたいことをいかに障害なく実現できるか」がツールの存在価値なので、みなさんにこのような価値を提供できて本当によかったです。

 

ありがとうございます。最後に、今回の経験を踏まえたみなさんの今後の展望を教えてください。

 

 

イベント参加前から自分なりにポートフォリオを作っていたので、別の方向からスキルの幅をアピールすることが出来るようになり良かったです。さらに充実したポートフォリオを制作して、ゲーム業界への足掛かりとしたいと思っています。

 

大学院へ進学予定なので、就職するまでの間に友人にUEを布教して、今回のようなイベントシーンを含んだゲームを一緒に作ってみたいと考えています。卒業後にゲーム業界に入れるように、もっと力をつけていきたいです。

 

いままでは周りにゲーム業界を目指している人が全くいなかったので、相談もできないような状態でした。今回のブートキャンプは、ゲーム業界を目指すにあたっての良いきっかけになったと考えています。新卒でゲーム業界に入れるよう、勉強を続けたいと思います。

 

プランナーの業務は多岐に渡るため、企業としても採用の判断が難しい職種です。開発が大規模化する中で、プランナーブートキャンプで培ったスキルをポートフォリオとして選考に進んでいただいたり、スクリプトの経験を通じて業界の入るような方法論が出てくるといいなと思っております。ゲーム業界で、みなさんをお待ちしております。本日は本当にありがとうございました!