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2023.11.20UEFN

[UEFN] 素早くプロトタイプを作り対戦ルールを突き詰める – 西部劇ハンティングPvPvEバトル『WANTED!!』開発ブログ

こんにちは、ヒストリアUEFNチームです。

西部劇ハンティングPvPvEバトル『WANTED!!』の制作では、複数プレイヤー対戦ということで素早くプロトタイプを作る事でゲームルールの試行錯誤に時間を掛けることができました。
今回は、その過程について順を追って説明していきます。

【SLASHH:UEFNタイトル】
西部劇ハンティングPvPvEバトル『WANTED!!』

https://historia.co.jp/archives/36840/

マップコード:6058-6785-6636

 


 

まずは以下のPVをご覧ください。

 

「WANTED!!」はエネミーを倒して他のプレイヤーよりも多くのコインを得ることが目的の対戦ゲームです。

我先にエネミーを倒してコインを得るという、「獲物を奪い合う」体験がこのゲームのコンセプトにあります。
単にエネミーを倒していくだけでなく、他のプレイヤーと競いながら、ある時はプレイヤーを妨害したり、ある時は漁夫の利を狙ったりする動きが重要になってくるゲーム性です。

この体験を成立させるために、どのようなルールにすべきか、ということが最初に考えるべき課題でした。

 

1. プロト制作の流れ

ゲームのルールを決める際、そのルールが適切か確認するためには、テストプレイが必須です。
しかしこのゲームは対戦ゲームなので、ゲームバランスをテストするにはある程度の人数と時間が必要になり、シングルプレイのゲームと比べてコストがかかります。
そのため早い段階から「作る→試す→作る→試す→…」というサイクルを繰り返せる状態を作ることが重要でした。

 

  • テンプレートを用いたプロトタイプの作成

早くテストプレイに着手できるように、UEFNで島を作る際に使用できる、島のテンプレートを用いてプロトタイプを作成することにしました。

テンプレートにはいくつか種類がありますが、今回使用したのは「Tilted Towers POI Island」です。
建物の密度や全体の大きさが、ゲームのイメージに近かったため採用しました。

テンプレートはそのまま使うのではなく、少しだけ変更を加えました。
例えば今回のゲームでは、建物が高すぎると敵がどこにいるかわからなくなってしまうので、建物を全選択して一気に下げました。

ほかにも少しプロップを間引いたり、ランドスケープを削ったりしましたが、あまり詳細な部分には拘らず、スピード重視でこの作業は行いました。

 

 

  • 「仕掛け」を使って基本的なゲームの仕組みを作る

次にゲームの仕組みを簡単に作りました。フォートナイトクリエイティブでは各種「仕掛け」を用いることで、基本的なルールならばVerseを使わずとも容易に作ることができます。

 

プロジェクトが始まった当初に考えていたルールは以下の通りです。

  1. エネミーは倒されると武器を落とす
  2. プレイヤーは死ぬとすべてのアイテムを落とす
  3. ボスを倒すと宝を落とす、これを納品した人が勝ち
  4. 宝を持っている人は他の人に位置が晒されてしまう(そのためほかのプレイヤーに狙われやすくなる)

 

以下はこのルールを実装した段階でのプレイ動画です。

 

 

  • 使用した仕掛けの解説

・雑魚敵関連の仕掛け

「クリーチャースポナーの仕掛け」と「撃破マネージャーの仕掛け」を使用しました。

バトル中どこでも敵が湧くように、同じ設定のスポナーをレベル上に満遍なく配置しました。

「撃破マネージャーの仕掛け」では、落とすアイテムの種類と、どの種類のエネミーが落とすのかを設定します。

「2.プレイヤーは死ぬとすべてのアイテムを落とす」に関しては、デフォルトの設定のままです。

 

 

・ボス関連の仕掛け

ボスの設定も、再び「クリーチャースポナーの仕掛け」を使用します。敵の種類はBruteに設定します。
「ボスが倒されたら宝石を落とす」という部分に関しては、「キャプチャーアイテムスポナーの仕掛け」を使いました。

こちらの仕掛けの利点は、「アイテムを拾ったとき」や「アイテムを落としたとき」のイベントが取れる点です。
「プレイヤーマーカーの仕掛け」を使い、宝石を拾ったプレイヤーにマーカーが付くように設定します。

キャプチャーアイテムスポナーは、ボスを倒すまでは拾えないようにしたいので、「ゲーム開始時に有効化」のチェックを外し、ボスを倒したら有効化されるように設定します。

最後に勝利条件を設定します。
「キャプチャーエリアの仕掛け」を配置し、宝石を設定します。

これで宝石をキャプチャーエリアに持ってきた人はスコアを得るようになりました。
「エンドゲームの仕掛け」を使って、キャプチャーエリアが作動したらゲームが終了するように設定します。

ここまでできると、もう基本的なゲームの仕組みはすべて実装できたことになります。
あとはプレイして気になった点を修正、またテストプレイ……と繰り返しました。

 

2. ゲームルールの模索

ここからは、先に記載した初期のルールがどのように変遷していったかをご紹介します。

 

テストプレイを繰り返すうちに、以下のような課題が見えてきました。

  • 宝を納品するというルールがわかりにくい
  • プレイヤーキルが想定より多く、体験としてはバトロワとあまり変わらない感覚を覚えてしまう
  • ゲームが最初から最後まで単調で起伏が少ない

 

こういった課題を受けて、以下のようなルールに変えました。

 

変更前

変更後
1

エネミーは倒されると武器を落とす

エネミーを倒すとコインを落とし、そのコインで武器を購入し強化していく
2

プレイヤーは死ぬとすべてのアイテムを落とす

基本的に死んでも何も落とさない
3

ボスを倒すと宝を落とす、これを納品した人が勝ち

制限時間以内にコインを最も多く集めた人が勝利
4

宝を持っている人は他の人に位置が晒されてしまう
(そのためほかのプレイヤーに狙われやすくなる)

終盤、コインを最も多く集めた人のみ、位置が他のプレイヤーにわかるようになり、死ぬとコインを落とすようになる(そのためほかのプレイヤーに狙われやすくなる)

 

 

1.エネミーを倒すと武器を落とす

エネミーを倒すとコインを落とし、そのコインで武器を購入し強化していく

(動画は最終的なルックのものを使用しています)

この変更によって、積極的にエネミーを狙う行為が勝利に直結するようになり、プレイヤーキルのみではなかなか勝てなくなったため、プレイヤーがエネミーを狙うようになりました。

ゲームの起伏という点でもかなり改善されました。最序盤は丸腰同然の装備で、プレイヤーキルをするにもエネミーを倒すにも少々時間がかかりますが、コインを溜めて武器を買い、装備を整えることで徐々に戦闘の速度が速まり、したがって短い時間でコインを多く集められるようになるので、ゲームが加速していきます。

 

 

2.プレイヤーは死ぬとすべてのアイテムを落とす

基本的に死んでも何も落とさない

これもエネミーを狙わせるための変更です。

プレイヤーが倒された際のデメリットはリスポーンして敵のいるエリアに戻ってくるまで稼げなくなるという、時間的なデメリットのみになりました。
1、2の変更によって、戦い方がガラッと変わり、他プレイヤーの動向を見つつエネミーを狩るという戦法をとるプレイヤーが増え、「バトロワっぽさ」が一気になくなりました。

 

 

3.ボスを倒すと宝を落とす、これを納品した人が勝利

制限時間以内にコインを最も多く集めた人が勝利

4.宝を持っている人は他の人に位置が晒されてしまう(そのためほかのプレイヤーに狙われやすくなる)

終盤、コインを最も多く集めた人のみ、位置が他のプレイヤーにわかるようになり、死ぬとコインを落とすようになる(そのためほかのプレイヤーに狙われやすくなる)

コインを集めた人が勝利、というルールにしたことで、勝利条件が比較的わかりやすくなりました。
4は勝利条件の変更に合わせて変えた部分です。以前のルールで宝石を持った際、敵に狙われやすくなった状態の緊張感を損なわずに、ルールを簡潔にしました。
これに伴い、「最も稼いだ人が勝利」というルールが伝わりやすいように、賞金稼ぎのようなモチーフの世界観でまとめることに決まりました。

 

3. その後の制作フローとまとめ

ここまでのルールを決めたところでプロトタイプ島の役割は終え、新しい島を作ってグレーボックス→背景の飾りつけと本格的なレベルデザインに進みました。
グレーボックスのレベルデザインも、ここまでのテストプレイでの知見により、障害物の高さや密度について、どのくらいが適切かわかっている状態だったので、ゼロから始めるよりかなりスムーズに行えました。

本番用の島に移行してからも細かなバランスの修正等は行いましたが、大枠のルールに変更はありません。

 

レベルがある程度作り込まれていて、基本的なルールの実装ができているプロトタイプが開発の早い段階で完成できたのは、UEFNでの開発ならではだと思います。

フォートナイトで用意されているテンプレートや仕組みを活用し、テストプレイができる状況を素早く作ることで、ゲームルールやバランスの検証を多く行い、適切なルールを模索することに時間を費やすことができました。